経済の用語に「マーケットイン」と「プロダクトアウト」というものがあります。
これらは経済の分野のみならず、あらゆる分野に応用が利くので、最近気になっています。
ある商品開発を想像して。
マーケットインというのは「市場が先にありき」。消費者がどのような商品を求めているか、という市場分析に基づいて、商品を開発していく姿勢。
それに対しプロダクトアウトというのは「商品が先にありき」。新しいアイディアを持った商品を開発し、それを買ってくれる市場を作り上げていく姿勢。
ばっさり言えば、こんな感じです。
プロダクトアウトの好例が、iPodです。
1990年代にウォークマン全盛期があり、CDやMDを入れ替えて音楽を楽しみました。
このような携帯音楽を「着せ替え型」というなら、iPodというのは音楽を入れた機械をまるごと持ち歩いてしまおうという「ジュークボックス型」といえそうです。
ウォークマンにみんなが満足していた――そんな市場をいくら調査しても、iPodというジュークボックスの開発にはつながらないわけです。
『iPodをつくった男、スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス』のなかで、iPodに関するジョブズのコメントが印象的でした。
「ユーザー調査を通じて製品をデザインしていくことには、大きな困難が伴う。たいていの場合、消費者は、具体的な形にして見せてもらうまで、自分でも何が欲しいのかわからないものだからだ」(54ページ)
世の中に新風を巻き起こすブームというのは、とかくプロダクトアウトから作り出されているように感じます。(「
イノベーションはマーケット・インでは生まれない」日経BPネット)
医薬品の開発というのは、とりわけマーケットインの傾向が強い分野です。
「どういう薬を開発するか?」という企業方針の裏には、徹底した患者ニーズの把握があります。
製薬企業は人の命を預かっている業界で、さらに会社間の再編が相次いでいます。そのような背景にあっては、堅実なマーケットインは最良な方法なのかもしれません。
とはいっても、心の片隅でいつも「プロダクトアウトで何かを創出できないか?」というアイディアを練り続けていきたいな、と実感する昨今です。(いまだ妙案はありませんが・・・)
追記:
「なにかいいアイディアはないかな」と軽い気持ちで考え出したものっていうのは、ありていに言ってしまえば、月並みな発想に過ぎないんですね・・・自分自身もまた消費者の一人で、そんな自分の気軽な発想は、とどのつまり市場分析の範疇だからです。
・・・プロダクトアウトの発想とは、解脱を求める修行僧みたいです。(2008.06.24)
iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス (アスキー新書 048) (アスキー新書 48)
大谷 和利
マーケティング カフェ (PHP文庫 き 20-1)
岸 孝博