ちょうど一週間前、季節はずれの台風が駆け抜け、できあがった台風一過の秋空――よく考えると、かなり珍しい現象です。
遠くのほうで、うっすらとつむんでいる雲を見ると、すっかり秋になりました。
雲一つない空に思いをはせ、子供のころに聞いた台風一過の説明を思い出します。
「台風が通り過ぎるとき、空にある雲を全部吹き飛ばすから、透き通ったような晴れ間が広がるんだよ」
当時はしっくりきたはずなのですが、いまになってみると、イマイチ分かりません。台風が吹き飛ばしても、雲ひとつなくなるというのは不自然です。
当たり前のことですが、「分かる」というのは、僕らの知識や価値観が移ろうにつれ、動いていきます。
年を重ねると、いままで分からなかったことが「そういうことだったのか」と腑に落ち、一方で、分かっていたことが「あれ?」となります。
「分かる」というのを再認識した一瞬でした。
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雑学ブームの昨今、「分かる」ということに疑問を感じるときもあります。
少し前、「
カバの汗は赤い」という犀川先生の研究がNatureに掲載され、ニュースでも話題になりました。
すると、とある雑学番組でも、このことが問題に。
知ってる人いるのかな・・・と見ていたら、見事に一人の回答者が正解。さらに続けて「なんで赤くなるかも分かる」という。曰く「汗が酸化されるからだ」。
これをシャアシャアと「分かる」というから、雑学ブームには幻滅です。
「汗が酸化されて、コレコレコウナルカラ、赤くなる」というのが「分かる」という”形”のはず。それが途中で止まっているから気持ちが悪い。「酸化」という得体の知れないフレーズに頼るから、説得力がありません。
雑学には面白いものも多いですが、「へぇ」で終わることが多くて好きになれません。
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先日、友人と「メディア・リテラシー」を議論しました。
テレビが発信する情報を”批判的に見よ”というのがリテラシーとなりますが、一方で”鵜呑みにできる”という甘えもなくては、気楽に楽しめません。リテラシーとは、信頼の裏返しだと思います。
そんなテレビだからこそ、「コレコレコウナルカラ」を大事にして、分かる形を大事にしてほしいです。