この間、化粧品のロレアルがやっている
ワークショップに行ってきました。いろいろと刺激的な話が満載です。
一つには錯視。一番騙されたのが、この
渦巻き。赤紫とオレンジの渦は、同じ色のようです。絶対に分からない。
この他にも、たとえば、この
二つの図形。80%の人は赤が手前に見えるようです。たしかに、会場では9割近い人が赤を手前に見ている。でも俺には青が手前に見えます。そういう人が、数は少ないけれどもいるそうです。
錯視とは奥が深いようで、脳科学的にこれらの現象を解釈しきれていないとのこと。錯視が見える人もいれば、見えない人もいる。上の「赤青問題」で、俺のような例外的な人もいるわけで、そこら辺が面白い。例外は一体なにを意味しているのか。
ちなみにリンクソースは、講演をされた立命館大学の
北岡先生のページ(ロレアルWS専用)です。
二本立て講演のもう一つが、医科研の坂井先生による脳神経科学。認知に関してでした。
それでは問題。下の三つの色を見て「真ん中の
深緑色のタイルと近い色は、左右どちら?」。
日本人(文明圏の人)の多くは、左の「
黄緑色」と答えるようです。真ん中の色が「緑系」の色なので、同じ緑系に属す「
黄緑色」のほうが近く感じるということです。(俺は右の「
淡青色」のほうが近く感じたのですが、それでも
黄緑色を選ぶ気持ちは、なんとなく分かります)
結論から言うと、右側の「
淡青色」のほうが近い。色を三原色の赤緑黄(rgb)で表して客観的に判断すると、そのことが分かるようです。
本当は
淡青色のほうが近いのに、「緑」という言葉のバイアスで、
黄緑色のほうを近く感じる。以前、養老孟司が「言葉はものを切る」と書いていたのを思い出します。言葉にした段階で、情報が整形される、というのはよく聞く話ですが、このことを強く痛感させられる実験でした。
実際のところ、俺の周りでは、
淡青色のほうが近いという人が結構いました。言葉に惑わされず、直感的に色を見ているということでしょうか・・・
最後に脱線ですが、上の実験では「緑色という概念がない民族」の正答率が高い、という結果があるようで、とても面白い対照実験です。これに関連して。
そもそも「緑色という概念がない」ということ自体、初めて知ったときにはカルチャーショックを受けました。色そのものは普遍的な概念であっても、そこに名前を付けるときには「文化」が反映されるということです。
言葉と文化は一体化しているといいます。日本語の「判官びいき」(ただしくは「はんがん」ではなく「ほうがん」と読みます)も、外国語には翻訳しにくいと聞きます。大学でドイツ語を選択したときも、「この言語は情熱的な言葉が多くて、日本語には訳しにくいんだよ」といわれた記憶があります。言語はまさしく文化ですね。